物件選びをすると、初期費用の多さに驚くことがあるでしょう。
とくに賃貸事務所物件では、賃料の数か月分の初期費用がかかることがあります。

どうにかして費用を抑えられないか悩む方向けに、仲介手数料を安くするために押さえておくべきポイントを紹介します。

仲介手数料は不動産会社に払う報酬

賃貸事務所の仲介手数料を安く抑える3つのコツ

仲介手数料とは、物件を探してくれた不動産会社に支払う報酬のことです。

オフィス物件の仲介を依頼すると、不動産会社はオフィスの選定や現地の案内を行ったり、借り手と売り手の間に入って契約条件を調整したり、契約締結に必要な書類の準備や重要事項の説明などを行ったりしますが、その報酬として支払うのが仲介手数料です。

手数料の支払いは、あくまでも成功報酬です。
オフィス物件探しを依頼するだけでは報酬は発生せず、賃貸契約が成立したタイミングではじめて報酬の支払いをします。そのため、賃貸契約が途中で無効になった場合は、報酬を支払う必要はありません。また、宅地建物取引業の免許を持たない人が手数料を請求するのは違法行為です。

仲介手数料は、不動産業者が買い手と売り手の取引を円滑に進め、安全かつ法的に行うために提供する価値の対価といえます。

仲介手数料の上限は家賃の1ヶ月 + 消費税

オフィス物件に関わらず、賃貸契約における仲介手数料には決まりがあります。
国土交通省の定める宅地建物取引業法に従うと、手数料は賃料の1ヶ月分が上限です。

この手数料の上限を超えなければ、不動産会社が割合を自由に設定して構いません。
賃貸オフィスでの手数料は、一般的に借主が賃料の1ヶ月分を支払うことが多いですが、借主と貸主双方で手数料を負担した場合、貸主・借主双方0.5ヶ月分の負担となる場合もあります。

借主と貸主双方から1ヶ月分(合計2ヶ月分)を受け取ることはできません。
双方合わせて「賃料の1ヶ月分+消費税」が仲介手数料の上限であることに注意が必要です。

事業用取引の場合、賃料や仲介手数料にも消費税がかかる

住居用契約の場合、賃料や共益費、敷金・礼金には消費税がかかりません。

しかし、事業者が事業として行う事業用オフィス契約を契約する場合は、一部消費税がかかる場合があります。

住宅用住宅用以外
賃料非課税課税対象
共益費非課税課税対象
礼金・更新料非課税課税対象
敷金・保証金非課税非課税
仲介手数料課税対象課税対象

仲介手数料の相場は賃料の0.5~1.0ヶ月分

上記のように、賃貸の仲介手数料の上限は法律で「賃料の1カ月分+消費税」と定められています。
物件情報などに明記されていない場合、最大1か月分の手数料がかかると見積もっておく方が良いでしょう。

物件によって貸主から手数料が出る・出ないなどの条件が違い、その金額もバラバラなので個別に契約条件を確認する必要があります。

なお以下の場合には「仲介手数料0円」物件として募集されることもあります。

・不動産会社の自社オフィスビル・事務所の場合
・貸主が手数料の1ヶ月分を負担する場合

賃貸事務所の仲介手数料を安く抑える3つのコツ

ここまでの情報をふまえて考えると、仲介手数料を安く抑える方法は、
貸主側も報酬の支払いを負担してくれる物件を選ぶことだと言えます。

具体的には、以下の3つの方法があります。

①0.5ヶ月の負担でいい物件を選ぶ
②手数料0円の物件を選ぶ
③空き室期間が長い物件を選ぶ

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

0.5ヶ月分の負担でいい物件を選ぶ

借主と貸主双方で0.5か月分の負担なら、オフィス物件を借りる際の手数料を安く抑えることができます。

1ヶ月分の負担の場合と比べて半月分の違いですが、賃貸事務所の賃料は高額になることが多いため、半月分でも負担がかなり軽くなります。

仲介手数料0円の物件を選ぶ

物件によっては仲介手数料0円で契約できる場合もあります。

不動産会社が所有している物件の場合や、貸主側から仲介手数料1ヶ月が支払われる場合などに貸主側の手数料は0円になります。

空き室期間が長い物件を選び交渉する

その他に賃貸事務所で空き室期間が長い物件の場合、交渉で仲介手数料を0円にできる可能性もあります。

長い期間部屋が空いていると家賃収入が得られないため、早く入居してもらえるなら貸主が費用を負担してでも借りてもらいたいと考えるからです。

仲介手数料を安くする他に考えるべきこと

賃貸事務所の仲介手数料の注意点とは?

ここまで、仲介手数料を安くするための物件の探し方や考え方をご紹介してきましたが、それだけにとらわれていると損をするかもしれないので注意してください。

オフィス・事務所の設立・移転に関連しては、以下のことも十分に考えましょう。

「仲介手数料0円」が本当に得かどうか

最近は、「仲介手数料無料」という物件も増え、専用のサイトなども存在します。

賃貸オフィス・事務所の場合、1ヶ月の賃料金額が大きくなりがちなので、「仲介手数料無料」はかなり魅力的に思えます。

ただ借りるオフィス・事務所や不動産会社によっては、仲介手数料を支払ってもそれ以上に費用を削減できるケースも考えられます。

・数ヶ月のフリーレントがついてくる
・居抜きで内装費用を削減できる
・引越しや内装の業者を紹介してくれる
・質の高いアフターサービスを受けられる
・賃料内で駐車場や会議室などが利用できる

借りるオフィス・事務所を決める際には仲介手数料の金額だけでなく、費用全体を見て判断することが大切です。

敷金や礼金がは高額すぎないか

一般住宅の賃貸契約よりも、オフィス物件は敷金や礼金の期間が長くなる傾向にあります。
個人が借りる際には敷金や礼金は家賃の1~2ヶ月分が多いのですが、オフィス物件だと6~12ヶ月分が相場です。

敷金は退去時の負担金を軽くする意味や、家賃滞納時の保証の役割があるため、安くするために交渉することはあまりおすすめしません。一方で礼金に関しては、オーナーへのお礼という意味合いが強いので、不動産会社を通じて貸主と交渉できる可能性があります。

礼金の金額が高いと感じたら、不動産会社に相談してみましょう。
数ヶ月分の礼金を1ヶ月分に減額してもらえるなど、軽減してもらえるケースもあります。

オフィス設立・移転の初期費用はまとまった金額になるので、少しでも抑えられるよう交渉の余地がある項目は理解しておきましょう。

その他細かい費用の請求に注意

賃貸事務所の契約時には、これまでに検討した費用以外の費用を請求される場合があります。

たとえば、鍵交換費用、清掃費用、事務手数料などです。
どれも借主に費用を負担する責任はないため、見積もりに入っていた場合には交渉の余地があります。

賃貸オフィスの契約は頻繁に行うことではないため、聞き慣れない言葉や項目に戸惑うこともあるでしょう。よくわからない言葉をそのままにしたり、「こういうものなんだろう」と受け入れていると、成約時に思いもよらぬ費用を請求されることもあります。

不動産業者との間に情報や知識の格差があることは仕方ないので、わからない言葉や疑問に思ったことは都度明確することを意識しましょう。

■注意すべき関連費用

・原状回復費
・室内清掃費
・鍵の交換費用
・内容が不明確な事務手数料

また入居時の費用負担だけでなく、退去時には原状回復費用などを負担することになります。
将来的な退去の際金額についても契約書などをしっかり読んで理解しておきましょう。

広告費は借り主が支払う必要なし

不動産会社は物件を借りてもらうため、広告費をかけて宣伝しています。
当然ですがこの広告費の負担は、不動産会社側にあります。

借主が不動産会社に広告費をかけて物件を探して欲しいと依頼したなら支払う義務がありますが、そうでないなら支払いの必要はありません。通常の場合では、借主側から広告の依頼はしないため、請求があれば注意してください。

仲介手数料以外の要素も検討して物件を選ぶことが大切

今回は、賃貸事務所の仲介手数料の仕組みや安く抑えるコツや注意点などを詳しく解説しました。

賃貸事務所を借りる際には、家賃の数か月分の費用がかかります。一般住宅と比べて高額になりやすいため、できるだけ初期費用を抑える工夫しましょう。

ただし仲介手数料を抑えたことで、その他の費用がかさんでしまっては意味がありません。
初期費用としてかかる他の要素についても検討し、また入居中に受けられるサービスや利用できる施設なども調べて、全体として最適な物件、あるいは不動産会社を選ぶことが大切です。

その意味でも、最初から「仲介手数料0円物件のみ」など条件を狭くしすぎず、幅広い条件の物件情報を見ることをおすすめします。

仲介手数料の安さだけでなく、スタッフの質やフォロー体制、得意なエリアや扱った物件実績など、様々な観点から不動産会社を選び、自社にとって最適な物件を見つけ出してください。