人々が働くオフィスでは、快適な作業環境を保つためにも、空調やパソコンなどの機器を稼働させ続ける必要があります。そのため、電気代が高いと感じても、「仕方がない」と考える人も多いかもしれません。

しかし電気代は継続的に発生する費用だからこそ、少しの節約が経営や利益に大きな影響を与えます。

この記事では、オフィスにかかる電気代の相場や費用の割合を踏まえ、電気代を節約できる方法についても解説します。

使いすぎ?オフィスにかかる電気代の相場とは

オフィスにおける電気料金の仕組みと電気代の相場

オフィスの電気代は、他の会社などと比較しにくいため、使いすぎに気づきにくい費用です。
業種や広さなどによって違うことは前提ですが、まずは目安・相場を知って自社の電気代と比較してみてください。

オフィスの坪数における電気代の相場

オフィスの電気料金は、部屋の広さによって変わります。オフィスの坪数における、電気料金の相場は次のとおりです。

坪面積電気代の相場
10坪(従業員5~6人程度)約2万円
30坪(従業員20人程度)約4万円
80坪(従業員50人以上)約8万円

上記はあくまでも目安であり、従業員数や稼働時間、業務内容などで具体的な金額は異なります。
ただ相場を把握しておけば、電気代が高いのか、安いのかを判断する際に役立つでしょう。

オフィスで使う電気代の内訳

では電気代が相場より高かったり、もっと節約したいと思った時には何に注意すればよいのでしょうか?

オフィスの電気代の内訳を見てみましょう。

資源エネルギー庁の資料によると、夏季の点灯帯(17時前後)におけるオフィスビルの消費電力は、空調・照明・OA機器で全体の約88%を占めます。
消費電力の具体的な割合は、空調機器が48.6%、照明が23.1%、パソコンや複合機などのOA機器が14.3%です。

冬季においても空調機器が33.5%、照明が29.8%、パソコンや複合機などのOA機器が18.1%であり、この3つがオフィスにおける電気代の3つの要素となることは変わりません。

経済産業省 冬季季の省エネ・節電メニュー
資源エネルギー庁 夏季の省エネ・節電メニュー

まずは消費電力の割合が高い空調と照明について節電することが、電気代の節約に効果的だと言えるでしょう。

オフィスの電気代を節約する方法

オフィスの電気代を節約する方法5選

ここからは、オフィスの電気料金の節約につながる工夫について、空調機器と照明に関するものを中心に解説します。

エアコンなどの空調機器を新調する

オフィスのエアコンが古い機種の場合は、新調すると節電効果が期待できます。エアコンに限らず、電化製品は使い続けるほど劣化し、消費電力が大幅に増えるためです。

センサーで人の増減を感知して温度を調節する機能など、省エネ性能に優れた機種も数多くあります。使用する電力を削減できれば、電気の契約プランを見直すことも可能になるでしょう。

空調機器をまめにメンテナンスする

エアコンのフィルターを定期的に掃除すると、冷暖房効率を上げる効果が期待できます。ホコリや汚れでフィルターが目詰まりすると空気の循環効率が低下し、室内を冷やすために電力が余計に消費され、電気代が高くなるので注意が必要です。

そのため、2週間に1回程度の頻度で、定期的なフィルター掃除などの簡単なメンテナンスを行ないましょう。業務用エアコンであっても、フィルターの掃除は従業員でも対応できる場合があります。

ブラインドなどで冷房効率を上げる

冷房の効率を高めるため、部屋に差し込む日差しを遮る方法も有効です。

日差しが強い時間帯にカーテンやブラインドを閉めると、エアコンの効きが良くなり、消費電力を抑えられます。反対に、冬場の日中はカーテンを開けると部屋が暖まり、暖房をつける時間を減らすことが可能です。

サーキュレーターや扇風機を活用する

冷暖房の効率を高める方法として、サーキュレーターの併用も有効です。
室内の空気を効率良く循環させることで、夏も冬もエアコンの設定温度を極端に設定する必要がなくなります。

また、オフィスのデスクで暑さをしのぎたい場合、1人用の小型扇風機を活用してもよいでしょう。室内であれば小さい扇風機でも十分に涼しいため、スペースをとらない大きさのものを選ぶのがおすすめです。

季節にあった服装を推奨する

オフィスにおいて「クールビズ」「ウォームビズ」を導入することも、電気代を抑える有効な施策と言えます。

夏はノーネクタイ・ノージャケット、冬はひざ掛けやストール、カーディガンなどの活用を呼びかけることで、過剰な冷暖房を防ぐことができます。ただこの場合も、温度の感じ方には個人差があることを念頭に置いて、働きやすい環境の範囲内で実施するようにしましょう。

LED照明にし、不要な照明を間引く

オフィス・事務所の天井には全体が明るくなるよう、均等に照明器具が配置されています。しかし、レイアウトやエリアによっては、常時明るくしておく必要がない場所もあるでしょう。

普段使わない場所や、明るくなくても業務に影響がないような場所では、照明を一部取り除くなどして間引くことも効果的です。間引いてしまえば、スイッチが入ってもその照明は点灯しないので、無駄な消費電力を節約できます。

また現在ではすでに多くのオフィスで交換が進んでいますが、照明の消費電力を節約するには、蛍光灯からLEDに切り替える方法も有効です。

LEDは寿命が10年と長いうえに、消費電力が蛍光灯より3割ほど削減できます。照明器具の交換で初期投資が必要になりますが、ランニングコストを考えるとLEDの交換で大きな節電効果が得られるでしょう。

工事の際に電気工事士への依頼が必要になるケースがあったり、LED電球の方が高かったりと、初期投資としては多少費用がかかる可能性があります。ただ、長期的な使用ではかなり光熱費削減になります。

パソコンの明るさを落として設定する

Microsoftによると、パソコンディスプレイの明るさを100%から40%に落とすことで、約23%の節電になるとしています。

節電しながら賢く PC を使うには? : Microsoft Windows

ディスプレイの輝度が作業に影響するデザイン業務などでなければ、ディスプレイの明るさを落とすことで節電できます。仕事に支障がない範囲で実施するのであれば、効果的な節電方法となります。

離席時にはパソコンをスリープ状態にする

パソコン操作で最も電力を消費するのは、起動・シャットダウンなどの電源に関するタイミングです。
このため、節電しようと頻繁にパソコンを起動・シャットダウンを繰り返すことは効果的ではありません。

ただし、一定時間パソコンを操作しない時にスリープ状態にすることは、消費電力の違いから見て効果的です。

業務中は意外と会議や休憩などで席を離れることもあります。このような離席時に、こまめにパソコンをスリープ状態にすることを心がけましょう。また、これは社内の情報管理の観点からも有効な施策だと言えます。

残業や土日出社を減らす

オフィスの電気代を節約するために最も効果的なことは、電力の使用時間自体を短くすることです。

電気を使いがちな夜間の残業や、土日出社はできるだけ減らしましょう。
フロアに残っているのが一人だとしても、空調機器や照明の費用は発生してしまいます。

残業が常態化しているようであれば、まず「本当にその残業が必要か」から確認が必要です。
消灯時間を決める、週に一度「ノー残業デー」を設定するなど、社員への意識付けも必要となるでしょう。

やむを得ず残業する場合も、照明を使わないエリアは消して、必要な場所だけに電気を使うなどで多少の効果は見込めるかもしれません。

【事例】電気代の支払いで注意すること

過去にあった事例ですが、電気代が高すぎると感じた場合は、消費電力以外の電気料金が含まれている可能性も確認してください。

オフィスの電気料金を支払う方法は2種類ある

オフィスにおける電気料金の請求方法は「ビル単体による一括請求」か「店舗ごとの個別請求」のいずれかに分かれます。

前者は電力会社とビルで一括契約を行ない、ビル全体の電気料金を電力会社にまとめて支払う方法です。高圧状態の電気がビルにある受変電設備に送られ、低電圧に変えられた状態で各テナントに供給されます。テナントごとにメーターが設置されており、入居者は使用量に応じた電気料金をビルのオーナーに支払います。

後者の方法では、電気料金のプランをテナントごとに個別で契約し、電気料金は電力会社に支払います。一般家庭と同じように、電力会社や契約プランを自由に選ぶことが可能です。

なお、いずれの請求方法であっても、電気の契約はビル側の方針に従う必要があります。一括請求のビルで個別請求を希望するなど、異なる契約はできないので注意しましょう。

「電気代」以外の経費を請求されるケースに注意

このように、オフィスの電気代については請求の方法が変わりますが、オーナーや管理会社経由で一括で電気代を支払う場合には内容に少し注意が必要です。

消費した電気料金以外の費用が上乗せされていたケースがあるからです。

2017年9月、宮崎市の企業がビルのオーナーに電気代の過払金返還を求めた訴訟がありました。
この企業に対しては電気代としては通常の3〜4倍の金額がオーナーより請求されており、オーナーは通常の電気代の他の設備の維持費や事務費などを上乗せしていたことが認められ、東京地裁はオーナーに257万円の返還を命じました。

オフィスの賃貸契約をする際に確認しておくべきですが、支払う電気代が使用した分だけなのか、それともその他の費用を含む場合があるのかなども確認し、また電気代の内訳がもらえるのかなども確認しておきましょう。

電気代高騰、SDGs…オフィスの節電はさらに重要になる

2023年の夏も東京電力が一部地域に節電要請を行うなど、電力需要は逼迫していました。
また火力発電に必要な原油や液化天然ガス(LNG)などの化石燃料の価格が上がったことで、電気料金も上がっており、ビジネスのコストにも影響が大きくなっています。

オフィスにおける節電は、事業における利益に対しても影響力を増していくはずです。
またSDGsなど社会的な要請においても、企業には可能な限り無駄な電力消費を抑える姿勢が求められていくでしょう。

まとめ

消費電力の大半を占める空調を節電する場合は、定期的なフィルターの掃除に加え、カーテンなどで日差しを遮り、扇風機を活用して冷房効率を高めましょう。照明は蛍光灯からLEDに交換すると、長期的な節電につながります。このように工夫次第で電気代を節約できるため、取り組みやすい方法から実践してみてはいかがでしょうか。

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