従業員が増えたり、増やすことを予定していたりすると、スペースが手狭になる可能性が出てくるでしょう。このような場合は、スペースを広げていく方法を考えなければなりません。

オフィスの増床とは

増床(ぞうしょう)とは、建物の床面積を増築せずに拡大することを指す建築用語です。オフィスにおいては、使用中のオフィスフロアのデッドスペースを活用する、同じビル内の別のフロアを借りる、別のビルのフロアを新規で契約するといった方法で増床が可能です。

オフィスの増床で考えるべきポイント

会社の経営状況はどうか

増床を検討するときには、適切なタイミングがあります。そのタイミングに合わせてさまざまなことを考慮しますが、まずは現在の状況を踏まえておくことが大切です。

例えばこれから人数を増やしていきたいから広げるというのであれば、最終的にいったいどのぐらいの人数にしたいのかを考えなければうまくいかなくなります。

事業の拡大に対して売り場面積などを広げるのであれば、面積当たりの単価も計算したうえで、採算が合うかどうかを調べる必要があるでしょう。資金的な準備も必要になるため、いきなりすべてを進めるのではなく、段階的に準備を進めていくことが求められます。

周辺環境はどうか

増床の際には場所がなければ広げられません。テナントに入っている場合には、改築するケースがあります。許可がもらえるのかどうかは契約にもかかわる問題です。現状のまま広げられないのならば、転居するという選択肢も考えられます。

転居するとなれば、課題はもっと多く出てきます。交通の利便性を現在と比較しなければなりませんし、その他の設備の問題も考慮する必要があるでしょう。広げた結果使いにくくなるといった問題も出てくる恐れがあるので、メリットばかりではなく、どんなデメリットが生まれるのか、実際に使う状況を踏まえて検討をすることが必要です。

費用はどのくらいかかるか

広げる以上、必ず費用がかかります。東京において現在より安い賃貸オフィス物件があったとしても、転居には費用がかかるため、コストの計算が必要です。しっかりとした計画を練り、内容が具体的になればなるほど、正確に見通しが立ちます。かけられるコストには限界もあるため、具体的に検討をしていくことがポイントです。

オフィスを増床するメリット・デメリット

オフィスを増床するメリット・デメリット

現在のオフィスフロアで内部増床する場合のメリット・デメリット

現在のオフィスで内部増床をする方法は、負担が最も少なくなります。

【メリット】

費用を抑えられて、住所なども変わらないことです。業務を中断する必要が最小限で済むため、休業せずに済みます。

【デメリット】

総床面積は変わりがなく、限界も出てくるところです。もともと広げられるだけの床面積がなければ検討すらできません。整理して広げるケースとなるため、人員の増加や売り場面積を増やしたいといったケースでは、そもそも意味がなくなります。

現在のビルの別フロアで内部増床する場合のメリット・デメリット

現在のビルで内部増床をするのも、負担が少ない方法です。現状の物件内で広げていくところがポイントになってきます。

【メリット】

転居するわけではないため、移転よりも費用は抑えることができます。改めて新規で契約するわけではないので、賃貸物件としての信頼関係の構築もしやすいでしょう。必要なレイアウトの予想もしやすく、増員や売り場拡張にも対応しやすい方法です。

【デメリット】

広げられるだけの面積がなければ、そもそも検討できません。別途費用が掛かるのは当然としても、入居費用は必要です。同フロアではなく、別フロアに広げる方法もありますが、コミュニケーションが寸断されてしまうリスクは検討しなければなりません。

のビルで増床する場合のメリット・デメリット

こちらの方法は、別の物件で必要な広さを確保します。別の部署を作るといったとき使える方法です。

【メリット】

必要な広さを確保しやすく、内容に合わせて物件を探せば、効率的な運用ができます。雰囲気も変えられますし、レイアウトも自由に変えられるのがメリットです。効率化という点でも効果をあげられる可能性が出てきます。東京などでは賃貸オフィスをうまく使って広げていくといった手法も考えられるでしょう。

【デメリット】

新規で借りるため、費用はどんどんと大きくなります。目的と合致した物件が見つからなければ、広げられなくなります。通信設備などの構築が必要で、これにもコストが必要です。審査を受ける必要も出てきますし、登記も必要になるため、かなりの手間が掛かります。最大の問題は、場所が異なるため、コミュニケーションをどうとるかです。

オフィス移転で増床する場合のメリット・デメリット

オフィス移転で増床する方法は、すべてを引っ越してしまう方法です。移転までは負担が大きくなるものの、終わってしまえば機能的にも高められます。

【メリット】

希望した大きさの物件を見つけられると、さまざまな拡張に対応できるでしょう。レイアウトもリセットできます。効率的な運用ができる方法といえます。

【デメリット】

どうしても費用が増大してしまい、セキュリティーの構築なども検討していかなければなりません。引っ越すため業務が中断するのもダメージになる可能性が出てきます。

自社ビルを建て替える場合のメリット・デメリット

自社ビルを建て替えて増床するのは、資金さえあれば有効性の高い方法です。

【メリット】

最も自由度の高い方法で、要望を踏まえて建ててしまえば、メリットが増大していきます。耐震設備なども備えておけば、事業継続性の問題もクリアできるでしょう。

【デメリット】

多くの費用が必要となります。驚くほどの費用が掛かりますし、時間も必要です。現在の場所に建てるのであれば、一時的な移転も必要となるため、さらに費用を計上しなければなりません。

内部増床を管理会社に交渉する際のポイントや注意点

内部増床を管理会社に交渉する際のポイントや注意点

現在のオフィス環境を生かす内部増床は、費用を抑えて効率的に広げられる方法です。内部増床するためには、まず管理会社か仲介会社に相談することから始めます。

内部増床を考えている場合、継続して賃貸オフィスを利用する可能性も高いため、管理会社と衝突しそうな交渉の仕方にはしないよう注意しましょう。

交渉する際には、別の選択肢として移転を考えていることを告げるのは交渉術の一つです。ビルの空室を防ぐため、ビル内での増床であっても通常よりも費用が抑えられるよう、配慮してもらえる可能性が高まります。

ビル内の部屋がちょうど良いタイミングで空いているとは限りませんので、早めに相談をしてタイミングを見計らうことが重要です。契約が切れるタイミングで、新規募集を出す前に契約するなど、下交渉も検討しなければならないからです。

まとめ

増床を考える場合には費用も計算しながら、効率的に展開できる方法を見つけることが大切です。

東京でも基本の賃料はエリアによって異なりますが、利便性の良いビジネス街の場合、大規模になると賃料だけでも費用がかさみます。増床が良いのか、移転が良いのかという点はそれぞれのメリットとデメリットを比較して選ぶ必要があります。

いずれにしてもすぐにとはならないのが実情のため、会社の経営状況を鑑みて早めの段階で動き出す必要があります。