オフィス移転は、会社にとって非常に大きなイベントであり、移転に向けてやらなければならないことは山積みです。

そして、そんな大きなイベントを何度も経験したことがある人は少ないはずです。

だからこそ、オフィス移転について何をすべきか、何から始めればいいのか、イメージすらつきにくいのではないでしょうか。

「やらなければならないことがたくさんあるのはわかるけど、何をどうやればいいかわからない」

そんな方へ、こちらの記事ではオフィス移転に必要な全ての手順を時系列順に紹介します。

そして、この記事をオフィス移転の作業をする際の参考として、チェックリストとしてご活用いただければ幸いです。

オフィス移転のチェックリスト

オフィスを移転する際には、旧オフィスの解約や、引越業者の手配、取引先や社内への案内、届け出の提出、そしてオフィス家具やインフラの整備など、多くの作業が必要です。

やることが増えれば増えるほど、漏れや見落としが必ず発生します。移転する前、移転当日、移転した後に困らないようにも、一つひとつ丁寧にチェックしてください。

チェックリスト①移転先のオフィス決定まで

まずは、事前準備としてやっておかなければならない項目をお伝えします。

移転の方針と目的を決めよう

オフィス移転は大きなイベントです。

何のために移転をするのか、これを決めておかなければ、ここから先行なうべき作業全てで、方針がぶれてしまい、余計な工数と時間がかかってしまいます。

目的や方針は様々なものが考えられます。
例えば
「従業員が増えてオフィスが狭くなってきたから、もっと広いオフィスに移転したい」
「今のオフィスよりも賃料が安い場所に移転したい」
「生産性を上げるためにも、社員のモチベーションが高まるようなオフィスに移転したい」
「今よりも駅に近いオフィスに移転して、通勤にかかる時間を短縮したい」

このような目的や方針は一人で決めることなく、会社内で移転のためのチームを組織し、多くの意見を取り入れて決めましょう。

その上で、会社全体でしっかりと共有した上で移転の準備を進めてください。

現オフィスの契約内容確認しよう

移転の前に、現在入居しているオフィスの解約手続きを進める必要があります。まずは現オフィスの賃貸契約書を確認し、以下の項目に沿って、解約へ向けて進めましょう。

解約予告期間(いつまでに解約通知が必要か)

解約予告というのは賃貸借契約の満了前に解約する際に必要となる手続きのことです。この解約予告は多くの場合、解約日の3ヶ月~6ヶ月前までに通知することが義務付けられています。これが解約予告期間です。

しかし契約内容によっては、異なる場合もあるので、契約違反になって違約金が発生しないよう、契約内容をしっかりと確認しましょう。

オフィスの原状回復義務

解約する際に、現オフィスの内装を借りた時の状態に戻す必要があります。基本的にオフィスの原状回復にかかる費用は、賃借人の100%負担です。

ですので、管理会社やオーナーと原状回復の範囲をすり合わせた上で、早めに見積もり依頼を業者の方にお願いしましょう。

預託金(保証金)の返還時期

預託金は、現オフィスを契約する際に支払った保証金のようなものです。賃貸契約終了後に返還されます。
一般的には契約終了後の3ヶ月~6ヶ月が返還時期ですが、契約書に記載されていればその期間を確認しましょう。預託金の返還を受けるためには、オフィスが契約期間中に損傷を受けていないことや、清掃が行われていることなど、契約書で定められた条件を満たす必要があります。

オフィス移転のスケジュールを決めよう

オフィス移転は、大きなイベントであり、当然ながらかなりの準備期間が必要となります。ですので会社の規模にもよりもますが、6ヶ月~1年程の準備期間を想定しておきましょう。

この準備期間内でやることをリストアップして、大まかなスケジュールをまずは組み立てていきます。

移転先のオフィスを探そう

さて、移転の目的と方針が決まれば、早速それに沿ったオフィス探しをスタートします。目的を達成できる条件のオフィスであるかどうかはもちろん大事ですが、多くの従業員が働きやすい環境のオフィスである、ということは当たり前に達成しなければなりません。

立地

企業のイメージは、オフィスを構えている地域でかなり変わってきます。
ですので、企業のブランディングを重要視するのであれば、どの地域に移転するのかということをしっかりと考えておく必要があります。

加えて、そこで働く社員が通いやすいかどうか、という点も大切です。通勤時間を極力短縮できるように、電車やバスなどの公共交通機関でアクセスしやすい場所が理想的です。

設備

インターネットや電話はどのような企業でも当たり前に必要な設備です。移転先のオフィスで利用可能な通信会社はどこなのか、しっかりと確認しておきましょう。

その他にも、空調や水回り設備、セキュリティなどは後々面倒なことにならないためにも確認が必須です。

特に古いビルは、ここを事前に確認しておかないと、移転後に工事をせざるを得ない状況になるかもしれません。

コスト

家賃・保証金・礼金・仲介手数料・更新料などのコスト面をチェックし、事前にどの程度の資金が必要なのか算出しておきましょう。

実際に、理想的な条件の物件が見つかっても、必ず現地に足を運び、実際に目で見て確認するようにしてください。そこで働くことを想像しながら確認すると、気になる点はさらにたくさん出てくるはずです。

チェックリスト②移転先オフィスが決定してから

チェックリスト②移転先オフィスが決定してから

続いては、移転先が決まった後にやるべき項目をお伝えします。

レイアウトを決めよう

移転先のオフィスを決めたら、次はレイアウトを決めます。専門業者の方からアドバイスを元にレイアウトを考えるのが得策ですが、移転の目的に沿ったオフィスになるよう必要なものは、あらかじめ洗い出しておきましょう。

スペースの一例

執務スペース・会議室・応接室・社長室・休憩室・収納室など

インテリアとインフラを考えよう

レイアウトを考える際、同時にインテリアやインフラについても考えていきましょう。

インテリア

ここでいうインテリアは、オフィス家具だけでなく壁紙や床材、照明なども含まれています。
機能性や使い勝手はもちろんですが、オフィス全体の印象を左右するので、インテリアで企業が持つブランドやイメージを表すことができます。

もちろん社員の働くモチベーションにも繋がりますので、こちらも専門業者と検討を重ねながら慎重に進めていきましょう。

インフラ

先ほど移転先のオフィスを探す際の重要なポイントとしても上げましたが、電話・パソコン・プリンターなどのOA機器や通信設備は、社員ひとり一人の仕事にダイレクトに影響を与えるので、余裕をもって検討が必要です。

もちろん動作テストや万が一トラブルが出た際の対応などもしっかりと確認しておきましょう。

また、ここでリースする機器と新規で購入する機器も予算と照らし合わせながらリストアップしておきましょう。

依頼する業者を選ぼう

ここまで読んでいただければわかるように、オフィス移転は自分たちだけで行なうことはできません。各フェーズで専門業者に見積と作業を依頼する必要があります。

原状回復工事業者

現オフィスを入居時の状態に戻します。

不動産業者

移転先のオフィスを探し、契約します。

引っ越し業者

現オフィスから移転先オフィスへ荷物を移動します。

オフィス内装・設計業者

移転先オフィスの各種設備の施工や内装工事を実施します。

オフィス家具・リース業者など

移転先のオフィスで必要な家具や機器を手配・設置します。

業者は個別に依頼することもできますし、オフィス移転を1つのプロジェクトとして1から10までまるごとプロデュースしてくれるところもあります。

チェックリスト③オフィス移転の2ヶ月前に

ここからはオフィス移転が2ヶ月前にチェックすべき項目をお伝えします。

取引先へ通知しよう

オフィスを移転する際、取引先に移転する旨を記載したメールを送る必要があります。なので、あらかじめ取引先のリストアップとメールでの挨拶文作成を進めておきましょう。

もちろん取引先だけでなく、金融機関や会計士事務所・弁護士事務所、リース会社や各種加入団体など、会社として何らかのサービスを利用している場合は、そのサービス提供先への通知が必要です。

社内へ通知しよう

オフィス移転をスムーズに行ない、移転後も通常業務へすぐに移行するためには、あらかじめ社員へ、オフィス移転の計画や新オフィスのマニュアルを作成し、告知しておくことが大切です。

マニュアルには、オフィス移転の目的や方針、新オフィスのレイアウトなどはもちろん、引っ越し準備や取引先への通知を行う際の役割分担、移転当日のタイムスケジュール、移転後の動きなど、イレギュラーが起きても冷静に対応できるようにしっかりと作り込んでおきましょう。

その上で社内説明会を開催し、移転前に社員全員がしっかりと理解できている状態にしておきましょう。

書類・備品などの住所変更をしよう

現オフィスの住所が記載してある書類や備品などは、新オフィスに移転した後すぐに使用できるよう、あらかじめリストアップして、住所変更の準備を行ないましょう。

主に、ホームページ、名刺、社員証、伝票、封筒、契約書・請求書、などが挙げられます。

チェックリスト④オフィス移転の1ヶ月前から当日まで

ここからはオフィス移転の1ヶ月前から当日までにチェックすべき項目をお伝えします。

ここからはオフィス移転の1ヶ月前から当日までにチェックすべき項目をお伝えします。

引っ越しとそれに伴う準備のスケジュールを確認しよう。

オフィスの引っ越しは、当然ながら通常の引っ越しとは規模が異なります。

リスト作成・梱包作業

事前に、新オフィスに移動させるもの、現オフィスに残留しておくもの、廃棄するもの、などのリストを作成し、そのリストを元に普段あまり使用しない備品から梱包を進めていきます。

引っ越し当日の役割分担

そして、当日は誰が何をやるのか明確にしておく必要があります。
オフィス移転の場合は、引っ越し作業だけでなく、現オフィスと新オフィスそれぞれでの立ち合いがありますので、余計なトラブルを避けるためにも、人員配置はしっかりと行ないましょう。

移転時のデータ管理

オフィス移転時にはデータに関するトラブルが起こりがちです。特に多いのがデータの破損です。
引っ越し時の不注意やミスで、精密機器本体や、その内部に保管されているデータに影響が出る場合があります。

業者に頼んでいる場合 、精密機器本体に物理的な破損があった場合、補償されるかもしれませんが、内部のデータのみに破損があった場合、目に見えるものではないので、補償されないことも多々あります。

このようなことを防ぐためにも、必ずバックアップを取っておきましょう。

以下は、バックアップの一例です。

・外付けハードディスクへの保存
非常に安価です。ただし、データの容量があまり多くない点と、こちらも衝撃には注意です。

・クラウドへの保存
ネット上にデータを保存するので、物理的に破損することはなく、ネットさえ使えればいつでもデータを取り出せます。ただし、クラウドの利用料が毎月発生することに加え、ネット環境が整っていなければ、そもそもクラウドにアクセスできません。

各種機関への届け出

オフィスを移転する際には、各種機関への届け出が必要です。

・法務局
本店を移転した場合、「本店移転登記申請書」を移転してから2週間以内に提出します。
支店を移転した場合、「支店移転登記申請書」を移転してから3週間以内に提出します。

・税務署
移転してすぐに「移動届出書」を提出します。
移転してから1ヶ月以内に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書」を提出します。

・都道府県税事務所
 提出期限は都道府県によって異なりますが、移転後速やかに「事業開始等申告書」を提出します。

・年金事務所
「適用事業所所在地・名称変更(訂正)届」を移転してから5日以内に提出します。
新オフィスと旧オフィスが同じ年金事務所の管轄内かどうかで書類の種類が変わりますが、
提出先は旧オフィス管轄の年金事務所です。

・労働基準監督署
移転してから10日以内に「労働保険名称・所在地等変更届」を提出します。

・公共職業安定所(ハローワーク)
移転してから10日以内に「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出します。

・警察署
駐車場を利用する場合、移転後速やかに「車庫証明」を提出します。

・郵便局
オフィスの移転先と移転する日程が決まったら「転居届」を提出します。

・消防署
移転後のオフィスを使用する7日前までに「防火対象物使用開始届出書」を提出します。
移転後のオフィスで内装工事を行なう場合、工事開始の7日前までに「防火対象物工事等計画届出書」を提出します。

移転後のオフィスで50名以上の社員が在籍する場合、オフィス移転当日までに「防火管理者選任届出書」を提出します。
また「防火管理者選任届出書」を提出した後は、オフィス移転の7日前までに「消防計画作成(変更)届出書」を提出します。

各種機関への届け出は、期日が明確なものもあれば特段指定されていないものもあります。どちらにせよ、ぎりぎりになって慌てないためにも、早めに書類の作成・提出を行なっておきましょう。

各種機関への届け出

まとめ

オフィス移転では、やるべきことが非常に多岐にわたります。ましてや移転は頻繁に発生するイベントではないので、誰もが不慣れな中で進めていくしかありません。

そんな時にはこのチェックリストを使って、社内はもちろん各専門業者と協力しながらひとつ一つ確実に進めていってください。

また、一括でオフィス移転をプロデュースしてくれる専門業者を利用するのも一つの手です。通常業務の妨げにならないようにプロに任せて安心してオフィスを移転することができます。