近年、リモートワークや自由な働き方が広がりを見せています。また、都内ではここ数年、さまざまな街で大規模な再開発が行われており、大型オフィスビルの開業も相次いでいます。

今後、都内のオフィスビルの空室率は高くなっていくのでしょうか?
この記事では都内オフィスの空室率について現在の状況とこれからについて解説します。

オフィス空室率とは

オフィス空室率は、賃貸オフィスにおける空き部屋の割合を指し、オフィスビルの利益率や資産価値を表す指標となります。

企業にとっては、オフィス移転のタイミングや、長期的な事業戦略を立てる際の参考になるでしょう。

オフィス空室率の計算方法

賃貸用オフィスの空室率を計算する際には、床面積での計算が基本です。
空室総面積と賃貸可能なオフィス総面積の数値を確認した上で、

空室率(%)=空室の総面積 / 賃貸可能な総面積 ×100

と計算することで、オフィスの空室率を求めることができます。

注意点としては、複数のオフィス仲介業者がオフィス空室率を調査していますが、その数字は一致しません。これは調査主体によって、どの規模のビルを調査対象とするか、どの状態を「空室」と考えるかが少しずつ違うためです。

空室率ついて考える時は、このような調査内容の違いを意識してみるか、同じ会社が継続的に発表している数字から傾向を見るのが良いでしょう。
また、床面積でなく賃料や稼働率によって空室率を計算するケースもあります。

オフィス空室率から市場の状況がわかる

オフィス空室率が表すのが、オフィスの需要と供給のバランスです。
空室率が高い時は「供給過剰」、空室率が低い時は「需要不足」を反映していると考えられます。

もちろんその物件にもよりますが、一般に空室率が高い時は、契約において借主が優位な状況になりやすく、賃料やさまざまな条件で交渉することが可能になるでしょう。
逆に空室率が低い時は貸主が優位な状況で、賃料の値上げなどの条件提示される可能性もあります。

コロナ後もオフィス空室率は5%を上回っている

では、そのオフィス空室率について、東京都内の状況はどのようになっているのでしょうか。

都内のオフィス空室率の推移

2019年前まで東京都内のオフィス空室率は、1%台で推移していました。
しかし、2020年に新型コロナウイルスの流行が始まると、急速に空室率が上昇しました。

中央区、港区、新宿区などの都心では、大企業を中心にテレワーク対応を進めた影響でオフィス需要が低下し、地域によっては10%を超える空室率を記録しました。

現在、テレワークから出社へと勤務形態を戻す企業も増え、空室率も少しづつ下がってきています。しかしそれでも、空室率は以前のような低い水準まで戻ることはなく、供給過剰の基準とされる5%を上回り続けています。

参考:オフィス空室率6.15% 都心9月、3カ月連続低下 (日本経済新聞)

オフィスに求められる機能や空間の見直しが進む

コロナ禍には大企業中心に「リモートワーク」「テレワーク」での働き方が広がりました。
一部、出社に戻そうという動きがあるものの、以前と比較して働き方の選択肢として定着したことは間違いありません。

リモートワーク可能な勤務体系への移行が進んだことにより、企業としても、従来オフィスに必要とされていた機能や空間の見直しを進めています。

一部の企業はオフィススペースの削減や賃貸契約の変更を進めており、特に大型オフィスビルについて空室率の上昇が懸念されています。

都内オフィスビル空室率はどうなる?

では、今後の都内オフィスビル空室率はどのように変化すると考えられるのでしょうか。

今後も再開発が続きオフィスの供給が増える

東京都内では、今も大規模な再開発事業が進んでいます。
今後もこれらの大型プロジェクトの竣工が予定されており、不動産市場への影響は大きいでしょう。

新しいオフィスの供給が増加することで、既存ビルとの競争が激化し、一部で供給過多による、さらなる空室率上昇のリスクも指摘されています。

近年開業した大型オフィスビル

ミッドタウン八重洲(2023年3月開業)
画像引用:https://www.yaesu.tokyo-midtown.com/about/brand

虎ノ門ヒルズ(ステーションタワー 2023年10月開業)
画像引用:https://www.mori.co.jp/company/press/release/2023/07/20230720150000004505.html

麻布台ヒルズ(2023年11月開業)

今後開業予定の大型オフィスビル

TOKYO TORCH(Torch Tower 2028年度開業予定)
画像引用:https://www.mec.co.jp/news/detail/2023/09/27_mec230927_torchtower

人気や賃料は二極化する可能性

最新の設備や抜群のアクセスを備えたオフィスビルは、今後も人気を獲得し、需要も高まっていくと思われます。

一方、経年で劣化した古い建築物や、交通アクセスが劣るオフィスビルは、空室率の上昇や賃料の低下が懸念されます。

この状況で、市場全体での二極化が進むと予測されます。
高級オフィスビルは高い賃料が設定され、低品質のオフィスビルはそれに見合った賃料で取引されることになります。

小規模・短期契約のオフィスが増える可能性も

都内でも、広いフロアに借り手がつかないケースが増えると、面積を分けたり契約期間を短くするなどして、借りやすい物件が増える可能性があります。

特に費用を抑えたいスタートアップなどにとっては、オフィスが借りやすくなるでしょう。
例えば、三菱地所は、丸の内パークビルディング8階の3,600平米のフロアを高品質な小規模オフィスに改装しています。

xLINK(クロスリンク)|xLINK丸の内パークビル

ビジネスに最適なオフィスに移転するには良い時期

特に東京のオフィス市場は、テレワークの定着と、経費節減のためのオフィススペースの見直し傾向が続くことで、一部エリアで空室率増加・賃料低下が起こる可能性があります。

また、広いフロアにテナントが入らない場合には、シェアオフィスとして貸し出されるケースも増えています。

実際、空室率が比較的高い今は、事務所の移転や拡大を考えるには適した時期であると言えるでしょう。企業のオフィス移転も活発化しているので、規模の拡大・縮小どちらの場合でも、今後のビジネスに最適なオフィスを見つけやすいチャンスとして、ぜひ検討してみてください。